アイリス
「ああ! お帰りになったのね、お
とうさま。 それで、ダークオード
は手に入れられましたの?」
モルガン
「そうだ、娘よ。
 頼みどおりにな…」
アイリス
「さすがは炎の意志のおとうさま!
この目に狂いはありませんでした」

アイリス
「なるほど、これがダークオード、
始まりの時代に作られた最強の力の
歌なのね…」
「神はこの歌により天地創造を始め
られた…それほど強力な歌」

アイリス
「それでは…
 ねえ! 誰かいないの!?」

召し使い
「ははっ、アイリスさま…」
アイリス
「会議場にいる皆に告げてきて!
 遂に目的の歌が手に入った、と。
 これで全てが終わるのよ…」
召し使い
「ははっ…」

アイリス
「ちょうど今しがた、龍族の会議場
で、ガリハアクの件で、会議をして
いたところなの…」
「会議場に町長もいるわ。行ってこ
の吉報を告げてきてちょうだい」
モルガン
「そうだな、娘よ」

~会議場~

モルガン
「おや、娘の声だ」

アイリス
「…やっと、長年の屈辱を晴らす時
が来たわ! さあ、オードをガリハ
アク様に歌ってもらいましょう!」
リュッケル子
「ガリハアク様、だって!!?」

アイリス
「! 誰かいるの!?」

アイリス
「おとうさまと歌い手…!
 悪い時に、悪い所に…」

モルガン
「娘! これはどういう事だ!?」

アイリス
「どうって…聞いた通りよ。
 わたしたち龍族はもともとガリハ
アク様に作られた種族…」

モルガン
「娘!
 娘はわしをだまし…」
アイリス
「…話を聞いて、おとうさま。
 わたしたちは正しいの!
 ガリハアク様は…」
モルガン
「悪神ガリハアクに最強の歌を歌わ
せることのどこが正しい事だ!」
アイリス
「…問答無用ね。しょうがないわ。
あなたたちには、世界が一新される
まで、ここにいてもらいます!」

リュッケル子
「モルガン!」

アイリス
「さあ、はやく入って!
 さもないと…」


モルガン
「何故だ…娘…」
リュッケル子
「クソッ、モルガン、悲しむのは後
よ! 何とか、ここを脱出すること
はできないの!?」
モルガン
「…娘…」
リュッケル子
「ダメか…自分でなんとかするしか
ないかな…
 適当にうろついてみる?」


ボビ美
「…リュッケル子さん…モルガン
さん… 大丈夫ですか…」
モルガン
「!? ボビ美…!?
 お前も仲間かと思っていた…」
リュッケル子
「! エスタンシアの宿屋で奪った
楽譜、どうしたの?
 それに、あの時、なぜ逃げた…」
ボビ美
「アタイは龍族ですがね、長年、人
間たちと仕事をしていると、この世
界も捨てたもんじゃないってね…」
「詳しい話はあとです。
 まず、アイリスちゃんを止めなき
ゃならない。ガリハアクのもとにあ
の歌が渡るのを阻止しないと…」

ボビ美
「微力ですが、アタイの仲間が足留
めを試みています。この家を出て北
に向かって下さい」
モルガン
「す、すまない…」
ボビ美
「礼はあとからでもいい。
 とにかく早く! アタイには他の
手配があるから、先に行って!」


モルガン
「娘!」
アイリス
「おとうさま、そして歌い手…!?
 妨害工作といい、仲間割れがあっ
たようね…悲しい事だわ」
モルガン
「娘…なぜだ!?
 理由を…理由を教えてくれ!」
アイリス
「…なら、よく聞いておとうさま。
 この世界はもともと誰の物だった
か知っている?」
モルガン
「アトビオン神、であろう?」
アイリス
「違うのよ。この世界を造ったのは
ガリハアク様! そしてガリハアク
様はその時、龍族も造られた…」
「龍族が最古の種族というのは、そ
ういうわけよ。そしてガリハアク様
とわたしたち龍族は、しばらく平和
な時を過ごしたの…」
「その平和を打ち破ったのは、天空
から来襲した破壊神アトビオン!
 ガリハアク様は自分の領土を守る
ため戦われた…そして破れた」

リュッケル子
「…そんなバカな!
 私が教わった歴史と違う!」
アイリス
「勝利者の塗り替えた歴史なのよ!
そしてアトビオン神は、ガリハアク
様が戻れないよう音障壁を張った」
「続いて世界に、自分が造り出した
“人間”を放ち、ガリハアク様の造
られたものたち、古き種族やモンス
ターらを狩り、破壊し始めた…」
「わたしたち龍族は、人間たちと妥
協する事で生きのびてきたの。
 悪しき神、それは創造神ガリハア
クではない。破壊神アトビオンよ」

アロン子
「…なんですっ…て!!?」
アイリス
「そしてダークオードとは、創造神
ガリハアク様がこの世界をお造りに
なった時歌った曲…」
「アトビオンのしもべたちの手で隠
されていたけれど、やっと発見でき
たわ! この歌により、再度この世
界を造りなおすのよ!」
モルガン
「…造りなおす…? だがそうすれ
ば、今まで生きていたものたちは、
どうなる…? 消えるのか?」
アイリス
「そう。皆、消滅する。
 でも、わたしたちのような古き種
族は、この歌の影響を受けないの」

モルガン
「…いかん! いかんぞ…
 人々を…その生活、夢、希望を…
みな消してしまうのか?」
「…それでは最初にアトビオン神が
行った事と同じではないか! 悪を
倒すために悪を使ってはならん!」
アイリス
「けど、それが唯一の道なの、おと
うさま…」
モルガン
「…ならば…ならば、わしが…
 止める! 娘!」
リュッケル子
「ふふん、モルガン…
 仲間がいるのを忘れてはいけない
わね? ひとりじゃないのよ!」
アロン子
「そういう話なら、私ものるわ!」
アイリス
「これも宿命、ね…
 破壊神アトビオンの子たち、
 いいわ、相手になります!」
「でも、おとうさま…あなたは、呪
いを受けて! 不戦の呪いを…
 これで、あなたとは戦わない!」

モルガン
「ああ、娘よ…許せ…」

…ごめんなさい。


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